GAMMA10では、サーマルバリアー部に捕捉される低温イオンが未知の機構で径方向に輸送されている事が実験的に示されています。この機構を解明する為に、理論・シミュレーショングループではプラグ/サーマルバリアー部に捕捉されたイオンの軌道計算を実行しました。このときに注目したのはプラグ電位の非軸対称性でした。プラグ電位は軸方向に勾配を持つように形成されます。これは同様に径方向にも非一様な勾配を持つ可能性を意味しています。下図には方位角方向のモード数m=3の非軸対称性を持ったプラグ電位が存在するときのイオン軌道のポアンカレ切断面(ある軸上断面をイオンが通過するときの交点の軌跡)をプロットしています。プラグ電位の非等方度が強くなるとイオンの軌道が乱れてくる(ストキャクティック軌道になる)事が分かります。詳細な計算の結果、この軌道の乱れによるイオンの径方向輸送は実験結果を説明するのに充分な大きさがある事が明らかになりました。つまりプラグ/サーマルバリアー部に捕捉された低温イオンは、プラグ電位の非軸対称性に起因する粒子軌道の乱れが原因で径方向に輸送されていたわけです。