センター基本理念

当センターは、筑波大学設立から間もない1979年に設置され、旧東京教育大学時代から進めてきたミラー磁場閉じ込めをキーとして、プラズマ核融合研究に取り組んでいます。基幹装置GAMMA 10/PDXを用いた研究成果は、コアの高温のプラズマ現象のみならず、核融合炉に必須の境界プラズマ研究にも展開しています。世界的にも高く評価される大電力ジャイロトロン開発は、高性能プラズマ生成のためのジャイロトロンを用いた、電子・イオン温度の上昇に加えて、境界/ダイバータプラズマの制御につながる成果を得ています。また、基礎的な物理の解明や先進的な計測器の開発等、開放端磁場系の特色を活かした研究を積極的に推進しています。さらに、将来のダイバータ級定常高密度プラズマの達成に向けた新装置(Pilot GAMMA PDX-SC)建設に取り組んでおり、令和2年度には装置の基幹となる超伝導コイルの製作と据付を完了しました。

1.核融合反応と熱核融合炉について

核融合反応

軽い原子核同士が融合してより重い原子核に変わる反応です。例えば水素の同位体である重水素(D)と三重水素(T)の原子核が融合するDT核融合反応(下図)では、ヘリウムと中性子ができます。重水素1g分のDT核融合反応で石油約8トン分のエネルギーが発生します。

熱核融合炉とその構成

原子核同士の電気的反発を乗り越えて核融合反応を持続させるためには、燃料粒子を約1億度のプラズマ状態(原子核と電子が自由に運動する状態)に維持するのが有効です。この概念に基づいた発電炉を熱核融合炉(下図)といい、現在最も主流な発電炉概念になっています。

2.タンデムミラー装置 GAMMA 10/PDX

GAMMA 10/PDX (下図)は、全長27mの世界最大のタンデムミラー型プラズマ閉じ込め装置です。多数のコイルを用いてプラズマを閉じ込めるための磁場(最大3T)を発生させます。核融合を実現するには数億度の超高温プラズマ(コア)とそれを受け止める対向壁が両立することが必要になります。これを可能とするためには、コアと壁材料と間に位置する境界領域(周辺・ダイバータ)プラズマの制御が重要となります。GAMMA 10/PDXでは、この境界領域プラズマを模擬する高熱流プラズマの生成と、それを利用したプラズマと壁・ガスとの相互作用を含む物理、さらには壁材料の工学研究など、数億度のコアと対向壁の両立の理工学に挑戦しています。なお、PDXは Potential control and Divertor simulation eXperiments を意味します。

3.研究の概要

高性能プラズマ生成・加熱研究開発

イオンサイクロトロン共鳴加熱により、セントラル中央部付近において、1億度のイオン温度を達成しています。また、電子加熱、プラズマ電流の駆動、プラズマ中の不安定性の抑制のためのツールとして期待される大電力マイクロ波発振管(ジャイロトロン(下図))の開発において、世界最高性能を達成するなど、最先端研究を展開しています。開発したジャイロトロンは、GAMMA 10/PDX だけでなく、LHD(核融合研)、QUEST(九大)など他機関の核融合実験装置でも活躍しています。

高熱粒子束プラズマの物理の理解とその制御

GAMMA 10/PDXのミラー磁場配位は環状系の境界領域プラズマに相似しています。この特長を活かして、端損失の高熱流プラズマ(下図)を用いたダイバータ模擬研究を推進しています。核融合炉の第一壁の中で最も高熱負荷を受けるダイバータ板に照射されるプラズマの特性の解明とその制御に向けて、ダイバータ板を模擬するダイバータ模擬実験モジュールをGAMMA 10/PDX 開放端部に導入し、プラズマとその冷却に用いるガスとの相互作用による熱負荷の変化やその物理機構の解明に取り組んでいます。

4.共同研究

双方向型共同研究

各センターと核融合科学研究所(NIFS)間相互、及び他大学から各センターへの参加により行う共同研究です(下図)。

国内共同研究先

核融合研量研機構、東北大、東大、東京農工大、慶応大、東海大、信州大、名大、京大、阪大、大阪府立大、神戸大、兵庫県立大、広大、九大など

国際共同研究先

PPPL(アメリカ)、NFRI(韓国)、BINP(ロシア)、FZJ(ドイツ)など