1.粒子を用いたプラズマ生成・加熱
1-a 中性粒子ビーム入射によるプラズマへの粒子補給・加熱・電位形成の研究
水素原子を高エネルギー(~25 keV)に加速し,ビーム状に収束させてプラズマ中に入射することにより,プラズマに燃料補給,加熱,電位形成を目指した研究を行っています。図1は中性粒子ビーム入射装置の模式図を示しています。現在7機のビーム入射装置と,3系統の電源系が整備されており,これらにより,ガンマ10のセントラル部,アンカー部,プラグバリア部に各々入射しています。
図1. 中性粒子ビーム入射装置の模式図
1-b 水素固体ペレット,超音速分子ビームによる粒子補給と輸送
固体状水素の小粒(ペレット)を生成し、高速でプラズマ中に注入することや,水素ガスを高圧に加圧し,パルス状の超音速分子ビームを形成し,プラズマ中に入射することによって,燃料を供給する研究を行っています。これらの手法により、プラズマ密度などプラズマの性能の向上を目指しています。現在,ガンマ10セントラル部にペレット入射装置と分子ビーム入射装置が設置されています。図2は,固体水素ペレットを入射した際のプラズマ中で発生した輻射雲を高速カメラで捉えた様子を示しています。
図2. 個体水素ペレット入射時の高速カメラ写真
2.粒子・プラズマ発光計測に基づくプラズマ診断と輸送解析
2-a 中性粒子エネルギー分析器(CX-NPA)を用いた高温イオン計測
ガンマ10で生成されている高温のプラズマ中から荷電交換反応で生成される中性粒子をセントラル部に設置している中性粒子エネルギー分析器(CX-NPA)を用いて計測しています。図3は計測器の外観を示しています。
図3. 中性粒子エネルギー分析器の外観
2-b 水素バルマーアルファ光(Hα)計測及びモンテカルロシミュレーションに基づく中性粒子輸送の解析
プラズマから輻射される水素原子からの発光(バルマーアルファー光(Hα光)輻射)には,プラズマの中性粒子に関する様々な情報を有しているため,ガンマ10の各部にHα線計測器が設置されています。我々は,絶対感度校正されたHα線検出器を用いて,セントラル部からアンカー部にかけての,プラズマ中の中性粒子密度分布やリサイクリング挙動の研究を,モンテカルロシミュレーションコード「DEGAS」を併用して中性粒子輸送解析を行っています。図4は中性粒子輸送シミュレーション解析の一例を示しています。(上:シミュレーション用メッシュモデル,下:ガスパフ入射のシミュレーション結果)
図4. 中性粒子輸送シミュレーション解析の一例(上:シミュレーション用メッシュモデル,下:ガスパフ入射のシミュレーション結果)
2-c 高速カメラを用いたプラズマ発光の2次元イメージ解析
プラズマから輻射される発光を高速カメラを用いて観測することによって,境界プラズマの揺動や,プラズマ加熱系,ペレット入射,超音速分子ビーム入射によるプラズマへの効果について検証しています。現在,毎秒10万コマの速度を持つ超高速カメラ(GX-1)1台と毎秒1000コマの中速度カメラ(HAS-220)2台が稼働しており,セントラル部とエンド部のプラズマを観測しています。図5は,エンド部に設置したダイバータ模擬の為のターゲット板とプラズマとの相互作用によって,発光したプラズマからの光を捉えたものです。
図5. エンド部において撮影したプラズマとターゲット版との相互作用光の一例
3.将来技術の開発
直接エネルギー変換の基礎研究
将来の核融合において核融合反応によって生成された高速の荷電粒子を,直接エネルギーに変換する為の基礎研究を,神戸大学との共同研究に基づいて行っています。図6は、核融合プラズマからの直接エネルギー変換の原理図を示しています。
図6. 核融合プラズマからのエネルギー直接変換の原理図