第8回PRCセミナーを開催しました
プラズマ研究センターにて、PRCセミナーを開催しました。第8回となる今回は、Alpha Ring社(台湾)Chief Innovation OfficerのPeter Hsieh氏をお招きし、「Edge AI, Physical AI, and Fusion Energy」というタイトルでご講演いただきました。
講演では、人工知能(AI)が大規模なクラウドデータセンターに依存する形態から、データが生成される場所の近くで処理を行う「Edge AI」、さらにセンサーやアクチュエータ、制御機構とAIを組み合わせて実世界に働きかける「Physical AI」へと発展しつつある現状について解説いただきました。Edge AIでは、端末や産業機器などでAI推論を直接実行することにより、通信遅延の低減やリアルタイム性、プライバシーの向上が期待されます。一方、Physical AIでは、センサーによる認識(Sense)、AIによる判断(Think)、アクチュエータによる動作(Act)を組み合わせることで、ロボットや自律システムが周囲の環境を認識しながら行動する仕組みが紹介されました。
また、こうしたEdge AI・Physical AIを限られた電力と計算資源で実現するための新しい計算技術についても詳しく紹介いただきました。従来の大規模なTransformerモデルに対し、より少ないパラメータで環境に適応できるLiquid AI(Liquid Neural Networks)や、メモリと演算装置の間で大量のデータを移動する必要を減らすCompute-in-Memory(CIM)などが取り上げられました。さらに、メモリ、演算機能、通信機能を高密度に統合する多層3Dチップアーキテクチャについても説明があり、低消費電力化と低遅延化を両立しながら、ロボットやドローンをはじめとする自律システムをエッジ側で動作させるための将来像が示されました。
そして講演の後半では、AI技術の急速な発展を支えるエネルギー供給の重要性にも話題が広がり、Alpha Ringが目指す核融合エネルギーのビジョンについて紹介いただきました。今後Edge AIやPhysical AIが社会のさまざまな場所に普及していく中では、計算能力だけでなく、それらを持続的に稼働させるためのクリーンで安全かつ豊富なエネルギー源が重要になります。Alpha Ringでは、核融合エネルギーを将来の分散型・自律型AIシステムを支えるエネルギー基盤の一つとして捉え、エネルギーの生成・供給・利用のあり方を変えていく構想が示されました。
本セミナーは、AIモデルそのものだけでなく、それを実世界で動作させるための半導体・計算アーキテクチャから、その基盤となる将来のエネルギー供給までを横断的に捉える内容となりました。プラズマ・核融合研究を進める当センターにとっても、急速に発展するAI技術と核融合エネルギーとの新たな接点について考え、今後の研究や技術交流の可能性を展望する非常に有意義な機会となりました。


