新たな超伝導ミラー型装置の建設

核融合発電実用化に向けた重要なステップである原型炉の実現には、十分な予測性能を持つシミュレーションコードを用いた多様な磁場配位・幾何学的配位の検討を行う必要があります。そのため、原型炉ダイバータに相当する高密度領域のプラズマを定常的に生成可能なダイバータ模擬実験装置を用いて取得する基礎データに基づく、ダイバータシミュレーションコードの高精度化が求められています[1]。このようなダイバータ模擬実験を実現するためには、プラズマ密度 1020 m-3以上の水素(重水素)プラズマ、電子温度100 eV(加熱時. 放電のみでは10 eV程度)、イオン温度100 eV(加熱時)の定常プラズマが必要になります。現在、プラズマ研究センターでは、GAMMA 10/PDXで培った知見に基づいて、「定常高密度プラズマ生成」と「高密度プラズマの加熱」の両立を実証し、原型炉ダイバータ級定常高密度プラズマの実現に必要な外挿性の高いデータベースを得ることを目的とし、自然科学研究機構核融合科学研究所の双方向型共同研究を基盤にして、原型炉ダイバータ模擬に向けたパイロット装置(Pilot GAMMA PDX-SC)の建設を進めています。

[1]「ダイバータ研究開発の戦略的加速の方策に関する評価・検討報告書」(H27年12月)核融合エネルギーフォーラム ITER・BA技術推進委員会

ー Pilot GAMMA PDX-SCの概略目標 ー

将来の原型炉ダイバータ級定常高密度プラズマ達成に向けて、小型パイロット装置を建造し、性能達成に必要な外挿性の高いデータベースを、既存装置である GAMMA 10/PDXで培った知見に基づいて得ることを目標としています。現有の電源設備、加熱装置等最大限に活用し、 磁場コイルは端部ミラーを超伝導を用いた長時間放電を目指しています。

Pilot GAMMA PDX-SC のコンセプト

1.プラズマ源

「定常高密度プラズマ生成」を担うプラズマ源として、高密度プラズマ生成において高い実績を有するTPD型プラズマ源の知見およびヘリコン波プラズマ源を基盤として、(1) カスケードアークプラズマ (2) ヘリコンプラズマによる新たな高密度プラズマ源の開発を行っています。本プラズマ源の目標とするパラメータは、水素プラズマにおいて、プラズマ密度 > 1019 m-3 、プラズマ径〜10 cm(半値全幅では〜5cm)、放電時間:定常 (10〜100 秒)とし、放電中は、プラズマ源からプラズマが流入するプラズマ閉じ込め領域のガス圧力を10-4 Pa 程度に維持することを目指しています。

2.プラズマ温度

単純ミラー配位によるプラズマの閉じ込め領域を利用してプラズマの加熱を行い、プラズマ温度の上昇をはかります。ただし、プラズマの不安定性を抑制する工夫が必要となります。
(1) プラズマ安定化:Vortex Confinementを採用
(2) イオン加熱:イオンサイクロトロン周波数帯(ICRF)加熱
(3) 電子加熱:電子サイクロトロン共鳴加熱(ECRH, 2次高調波)、電子バーンシュタイン波(EBW)加熱

Pilot GAMMA PDX-SCの概略

 

  • 本体真空容器の両端にNbTi超伝導コイル、中央に常伝導補助コイルを高精度に設置
  • 中央部プラズマ径:φ0.4~1.1 m, ミラー端部プラズマ径:φ0.1~0.2 m
  • 中央部軸上磁場強度:0.05 ~ 0.1 T, ミラー端部磁場強度: 1.5 T
  • 軸対称性の持つ利点:コイルの単純化 → 経済性
  • 高ミラー比(R~30)の磁場配位による閉じ込め向上(常伝導コイル使用時:R~20)
  • ラインタイング機能とVortex Confinementを活用したプラズマ領域安定化

 

2021年2月には、2台の超伝導コイルの高精度据付が完了しました。

 

2022年3月には、本体真空容器と常伝導コイルが設置されました。