ミラー磁場によるプラズマ閉じ込めとタンデムミラー方式による閉じ込めの改善


ミラー磁場によるプラズマ閉じ込め

核融合を実現するためには,プラズマを数10 keV(数億度)以上の高温に加熱して,1m3当りの粒子の密度と閉じ込めている時間の積を1021個・秒以上にする必要があります。そこで,磁場を使って閉じ込めます。

2個の円形コイルを並べて同方向に電流を流すと,コイル近くでは強く,コイル間では弱くなる磁場分布が形成され,これを単純ミラー磁場配位と呼びま す(下図)。プラズマ中の荷電粒子は磁力線に巻きつきながら運動します。この巻きつき方がしっかりしていると,図に示すように磁場の強い所で,まるで鏡が あるかのように跳ね返されるので,粒子は閉じ込められます。これがミラー磁場によるプラズマ閉じ込めの原理です。しかし,中には巻きつき方がゆるやかな粒 子もあって,これは磁場では跳ね返されずに端から逃げ出してしまいます。これをプラズマの端損失と言います。また単純ミラー磁場では中心から半径方向外側 に向かって磁場が弱くなっているので,プラズマが外側へ逃げやすく,安定に閉じ込めることが難しくなります。これをプラズマの巨視的(MHD的)不安定性 と言います。

そこでプラズマを安定に閉じ込めようというのが極小磁場の考えです。ベースボール形のコイルに電流を流すと,中心部で最も弱く,外側のどの方向にも 強度が増していく磁場分布,即ち,極小ミラー磁場配位が出来ます(下図)。プラズマをこの中に閉じ込めると,どの方向にプラズマが移動しても磁場がより強 くなっているので,安定なものとなります。極小磁場配位によって最も有害な巨視的不安定性は取り除かれましたが,単純ミラー磁場配位の場合と同様に,依然 としてプラズマの端損失は大きく,もう一歩の工夫が必要です。また,ベースボールコイルを変形させて二つ組合せた陰陽(インヤン)コイルでも同様に極小ミ ラー磁場を実現させることができます。磁力線の形は単純ミラー配位では軸対称ですが,極小ミラーでは扇型が組合わさった非軸対称になります。

単純ミラー磁場(軸対称系)

極小ミラー磁場(非軸対称系)

 


タンデムミラー方式による閉じ込めの改善

電位による閉じ込め

経済性のある核融合炉を考えた場合,ミラー磁場からのプラズマの端損失をもっと減少させて,閉じ込め性能をさらに良くする必要があります。

この閉じ込め改善策として考え出されたのが,プラズマを電位の壁で閉じ込めるタンデムミラー方式です。即ちミラー磁場を直線的に並べ,両端のミラー 部に高温高密度のプラズマを生成すると,中央ミラー部より高い正の電位が形成されます(下図)。この電位の壁で中央ミラー部のプラズマを閉じ込めます。こ の電位閉じ込めの原理は世界最初のタンデムミラー装置ガンマ6で実証され,閉じ込め性能が改善されました。その後,米国のTMX等のタンデムミラー装置で もこの方式による閉じ込めの改善に成功しています。これらの成果により,ミラー型装置はトーラス型装置と対等の立場を確立しました。ミラー型装置はトーラ ス型装置と異なり、装置に端があるので開放端系とも言われます。先に述べたように、ここからプラズマが逃げ出しますがこれを逆手にとり、逃げ出してくる荷 電粒子から直接電気を取出す事が可能    となります。これは将来更に進んだD-D核融合が実現した場合に、トカマク等のトーラス型よりも有利な発電方式となる可能性があります。

タンデムミラー原理図

さらに進んだ閉じ込めの改善

サーマルバリア型タンデムミラー

核融合反応を起こす高温プラズマを閉じ込める電位の壁をより容易な技術で,かつ効率良く作ることは,核融合炉を実現する上で非常に重要です。

サーマルバリア(熱障壁)とはイオンの閉じ込め電位の手前に作られる電位のくぼみのことで,イオンの閉じ込め電位の形成にあずかる高温電子がその他 の電子と交わって冷やされないよう,熱的に隔離する働きをします。これにより,閉じ込め電位を,より少ない加熱電力で効率良く形成することができます。こ れはガンマ10等で実証され,端損失に関して閉じ込め性能が飛躍的に改善されました。

軸対称化タンデムミラー

ミラー磁場からの端損失の問題が解決すると,今度は半径方向へのプラズマの損失が問題となってきます。これはプラズマの安定性を確保するために用い る極小磁場の非軸対称性が原因となって生じるもので(新古典輸送と呼ぶ),磁場の軸対称性を良くすることによって,半径方向への損失を小さく抑えることが できます。ガンマ10では極小磁場で安定性を確保した上で,中央ミラー部のイオンを軸対称なミラー磁場及び電位で閉じ込めることができるよう工夫していま す。実際,ガンマ10では新古典輸送が小さいことが実証されました。