制御核融合を実現するためには、高温 プラズマを生成し、高密度の状態で一定時間以上維持する必要がある。しかし、プラズマか
ら放射される光は放射損失によるプラズマのエネルギー閉じ込めの悪化をもたらし、その妨
げになる。従って、このプラズマから放射される光を計測することは、プラズマのエネルギ ー閉じ込めの状態を知る上で重要である。
プラズマから放射される光には、電子・イオンのクーロン衝突による制動放射、電子
・イオン再結合による再結合放射、原子あるいは不純物イオンの放射遷移による線スペクト
ル放射がある。プラズマからの制動放射の放射パワーは、不純物イオンの電荷数Zの2乗に比
例するので、プラズマのエネルギー閉じ込めを向上させるためには、不純物によるプラズマ
の汚染を防がなければならない。不純物イオンからの放射遷移によるスペクトルは不純物イ
オン固有のものなので、このスペクトルを測定することにより、不純物イオンを特定するこ
とができ、その空間分布を測定することにより不純物イオンの空間分布を知ることができる。
この空間分布を時間をおって測定することにより不純物のプラズマへの混入の様子を知ること
ができ、不純物の発生機構の解明に役立つ。さらに、不純物イオンの輸送現象をも知ることが
でき、これはプラズマ中の電位構造を知る上で重要となる。また、不純物イオンスペクトルの
ドップラーシフト、ドップラー広がりを測定することにより、プラズマ中の回転速度、イオン
温度等を測定することができる。プラズマ回転速度の測定からプラズマ中の電場の空間分布を
導出することが可能である。この他、絶対放射強度の測定から中性原子密度の空間分布の測定
が可能である。また、分光モデルにあてはめることにより電子温度、電子密度等のプラズマパ ラメーターを測定することも可能である。
分光計測は、基本的にプラズマに影響を 与えずに行うことができるので、プラズマのモニターに非常に適している。
ガンマ10では、軟X線分光器(5-35nm)、真空紫外分光器(15-105nm)、紫外/可視分光器(200-700nm)、Hα線計測器を用いて、プラズマ放射光を測定し、分光モデル(主に衝突・輻射モデル)を用いてプラズマ診断を行っている。
Hα計測装置によ
ってプラズマの形状をモニターすることができる。可視分光器によって不純物の混入の様子を常
時モニターしている。これらは、実験開始初期の壁コンディショニングの評価に役立つ。この紫外/可視分光器による不純物スキャンは、真空度劣化の原因を探るときにも役立つ。また、可視/紫外分光器によるプラズマ回転計測による電場計測を行うことにより、電位閉じ込めについて調べている。
Hα線2次元計測
装置によってプラズマの中性原子密度分布の時間変化を観測している。
この測定器は、Hα線の放射輝度の空間分布の時間変化を視覚的に示すことができ、衝突輻射モ
デルにあてはめることで中性原子密度分布の時間変化をみることができる。
2次元紫外可視分
光測定装置によって、不純物イオンの紫外・可視領域の空間分布が測定でき、特にド
ップラーシフトを測定することによってプラズマ回転測定を行っている。プラズマ回転測定によって、
反磁性ドリフト、E×Bドリフトの測定がなされ、電場の空間分布の測定も可能となった。また、
不純物イオンのイオン温度計測、水素原子のバルマー線系列の線強度比による電子温度、密度計 測も行っている。
真空紫外分光器で、真空紫外領域の不純物イオンスペクトルの空間分布の 測定を行っている。この測定によって高電離不純物イオンの空間分布の時間変化がわかる。実験
開始初期の壁コンディショニング評価に役立てる予定である。
軟X線分光器
は、斜入射式の分光器と多層膜反射鏡型の分光器と二種類ある。斜入射分
光器は、多波長同時測定可能な分光器であり、真空紫外分光器と同様、不純物イオンの空間
分布を測定できる。多層膜反射鏡型は単一波長で切り取った2次元画像を測定できる。これら は、不純物の発生機構の解明に役立つ。
分光測定によって得られたデータを分光 モデルにあてはめることによって、プラズマ電子温度、電子密度、中性原子密度、イオン温度 等、プラズマパラメーターを知ることができる。
マイクロ波によるプラズマ診断は、プラズマ密度、プラズマ揺動を直接測定することができ、2次元イメージング測定などを用いることにより、より視覚的にもプラズマの振る舞いを理解することが可能となる。
GAMMA 10/PDXでは、各セル毎に70 GHzのマイクロ波干渉計が設置されており、セントラル部、西プラグ部、エンド部には多チャンネルの干渉計が設置されている。
また、セントラル部には、密度の局所揺動計測が可能な反射計が設置されており、プラズマ揺動研究に用いられている。
プラズマの電子温度計測法として、核融合プラズマでは一般的に行われている、トムソン散乱計測をタンデムミラーGAMMA10においても適用することとし、
H21年度に核融合研との双方向型共同研究により、GAMMA10-トムソン散乱計測システムを導入した。2J/pulseのYAGレーザーを使用し、90°散乱光を凹面ミラーにより光ファイバーへ集光し、5チャンネルAPD付分光器で測定する。信号は、高速オシロスコープにより計測し、プラズマショット毎に電子温度計測が可能となるようにLabVIEWプログラムを構築した。H22年6月には初めてのトムソン散乱信号を観測し、H22年10月から定常的に電子温度計測を行っている。
H23年度より、NIFS-LHD計画共同研究によりトムソン散乱光強度を増加させる目的で「新型マルチパス・トムソン散乱計測システムの開発」を開発し、H28年度より「レーザー増幅アンプを用いたマルチパス・トムソン散乱計測システムの開発」を行い、従来の8倍以上の散乱光信号の取得に成功した。また、電子温度、密度の高時間分解計測も可能とした。
一方、エンド部のダイバータプラズマの電子温度・密度計測のため、エンド部にもトムソン散乱計測システムを導入した。ようやく、H30年度からトムソン散乱信号の取得に成功した。
核融合プラズマにおいて、プラズマの高温、高密度化、及び定常維持のためには、プラズマ粒子補給は重要な意味をもつ。プラズマ粒子補給の詳細制御法の一つとして、ペレット入射法が有効であるが、高磁場側からのペレット入射の有効性が近年の研究で明らかとなり、ペレットの輸送を行うガイドチューブの使用が重要となってきた。しかし、ペレットのガイドチューブ内での損耗過程、輸送メカニズム等に関しては、未だ明らかとなっていない。さらに、核融合装置において定常運転を行った場合の連続ペレット入射時におけるガイドチューブ内での圧力上昇による速度、質量の変化等、連続ペレット入射を行った場合の問題が考えられる。これまでに、ペレット入射におけるガイドチューブ内での損耗過程、輸送メカニズムを明らかにすることを目的として、ペレットのガイドチューブ内での形状、速度、質量計測器及び圧力上昇センサーの開発を行い、ペレットのガイドチューブ通過後の情報を取得し、詳細研究を行っている。さらに、今後、プラズマへ入射後のペレット溶発雲からのHα線計測と併せて、プラズマへの粒子補給効率について総合的に調べることにする。
このページの先頭へ〒305-8577
茨城県つくば市天王台1−1−1
TEL 029-853-6230
FAX 029-853-6202